この記事では、公務員の節税対策について、具体的な方法を基礎知識や注意点と共に紹介します。
安定した収入を得られる公務員ですが、将来に備えた資産形成と税金対策は疎かにできない大切な要素です。その点、公務員には実にさまざまな節税方法が実践できるのです。特定支出控除の活用やNISA、iDeCoでの投資や不動産投資など、法制度を守りながら税負担を軽減する余地があります。
そこで今回は、公務員における節税対策の重要性とおすすめの節税対策を6つ紹介します。税金対策の基本から、各種控除・節税対策の具体例を詳細にまとめました。
公務員でも節税は可能|税金対策の重要性について解説
公務員でも、税務制度に基づいて正しく年末調整や確定申告を行えば、節税・税金対策が可能です。
毎月安定した収入を得る公務員は、通常は毎月の源泉徴収を通じて納税されます。「自動的に納税されるため、節税の余地はない」と誤認しがちです。
しかし、源泉徴収される金額は、その方の所得や経費の状況をすべて把握したうえで計算されるわけではありません。例えば不動産投資の経費やiDeCoの掛金などのように、年末調整や確定申告を通じて認識される所得控除・税額控除があります。

税務制度上で、経費や控除として認められる要因を正しく理解して有効活用すれば、公務員でも節税が可能です。
公務員におすすめの節税対策6選

公務員が実行できる節税は多数あります。
不動産投資やiDeCo、NISAのように、投資しながら実行可能な節税対策があります。また、ふるさと納税を活用すれば、特産品や日用品を受け取りながら節税が可能です。
生命保険料・医療費控除、特定支出控除などの制度を活用した節税を実践するのも一案です。
副業禁止など、公務員には一般の会社員とは異なるルールがあるものの、ここから紹介する方法であれば、公務員独自のルールに抵触せずに実行できます。
不動産投資|減価償却を計上して節税と資産形成の両立
不動産投資は、一定の規模までであれば投資の一環とみなされます。そのため、公務員でも不動産投資を通した節税対策は可能です。
投資目的で不動産を所有していると、減価償却費が法定耐用年数の期間まで計上できます。減価償却費とは、年数の経過に従って建物の帳簿上の資産価値を下げる手続きです。
減価償却費を経費計上すれば、出費を伴わずに所得を圧縮でき、見かけの所得を抑えれば、その分所得税・住民税を減らす節税効果が生じます。
また、所有物件を通じて入居者から賃料を受け取れば、現金収入を増やす手段としても有効です。
なお「5棟10室」もしくは年間の賃料収入が500万円を超えると、投資ではなく「不動産事業の経営」とみなされます。不動産投資で節税に取り組む場合は、これらの規模に抵触しないように注意しましょう。
iDeCo|掛金が全額所得控除になる老後資金準備
公務員の節税対策として、iDeCoへの加入もおすすめします。
iDeCoは、国民年金基金連合会が運営する確定拠出年金の制度です。毎月設定した分の掛け金を拠出し、選択した資産(投資信託や生命保険、定期預金など)に投資します。60歳以降は、運用資産を一時金もしくは年金として受け取り可能です。ただし、拠出した資金は原則60歳まで引き出せません。
iDeCoはまず、掛金が全額所得控除となるため、所得税・住民税の圧縮効果があります。さらに、運用期間中に生じた収益は、自動的に設定した資産に再投資されます。その際は、この再投資分に対しても税金がかかりません。
また、老後に年金で受け取る時には公的年金等控除、一時金を受け取る時には退職所得控除が適用されます。こうした点からも、税制面で優遇されています。
公務員の場合は、月20,000円を上限に任意で掛金を設定可能です。家計に余裕のある方は、可能な範囲で多くの金額を拠出して、節税効果を高めるとよいでしょう。
NISA|運用益が非課税になる少額投資制度
NISAも公務員におすすめの節税対策のひとつです。
多くの場合、投資で生じた利益には税金がかかります。たとえば、課税(特定)口座で投資した株式や投資信託は、利益に対して20.315%の税金が発生します。
一方でNISAでは、運用益に対する税金が非課税となる制度です。2024年からの現行制度では、年間360万円、生涯では合計1,800万円まで非課税で投資できます。
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が新設されました。つみたて投資枠は、定期的に同額を拠出する投資に適した制度・商品に利用可能です。成長投資枠は、特定銘柄を一度に購入するスポット投資、積立投資のどちらにも活用できます。
非課税期間は恒久化されており、投資資産を売却するまで非課税が続きます。また、売却した資産分の投資枠は翌年復活するため、同じ元本相当額で別資産への投資も可能です。
ふるさと納税|実質2,000円で返礼品と節税
ふるさと納税は、自分の翌年の所得税・住民税を、居住する自治体以外に前もって支払う制度です。活用するほど、翌年の税金支払いを抑えられます。
さらに、ふるさと納税では、多くの自治体が多様な「返礼品」を用意していて、所定の商品を納税者に支給します。
納税者は、返礼品と納税自治体を確認したうえで、制度利用を検討可能です。
例えば、食材を返礼品として扱う自治体に納税すれば、納税を済ませつつ食費を浮かせられます。普通に食品を買えば消費税がかかる点を踏まえると、節税効果も得られます。
ふるさと納税で税額控除できる金額の上限は、給与所得者の収入や家族構成によって異なります。総務省のWebサイトにて目安額が一覧表でまとめられているので、参照して適正な金額でふるさと納税を実践しましょう。
生命保険料・医療費控除|年末調整で所得を圧縮
年末調整を通じ、生命保険料や医療費の控除を受けて納税額を抑える方法もおすすめです。
まず、生命保険で支払った金額は一定の条件まで控除ができます。加入時期によって上限額や条件が異なり、以下の通りとなります。
| 制度 | 区分 | 所得税の控除上限額 | 住民税の控除上限額 |
|---|---|---|---|
| 新生命保険 (平成24年1月1日〜) | 新生命保険料 介護医療保険料 新個人年金保険料 | 各4万円 合計12万円 | 各2.8万円 合計7万円 |
| 旧生命保険 (〜平成23年12月31日) | 旧生命保険料 旧個人年金保険料 | 各5万円 合計10万円 | 各3.5万円 合計7万円 |
加入している生命保険の新旧及び区分は、保険の契約書などで確認しておきましょう。新制度では、一般・介護・年金の保険にバランスよく加入した方が、所得控除の効果を最大化できます。
続いて医療費控除は、年間の医療費合計額が条件を上回った時に、支払った医療費が所得控除となる制度です。具体的には以下の金額が10万円を上回った場合に、上回った部分の金額が所得控除となります。
支払った医療費合計額 – 保険金で補てんされる金額 > 10万円
※ただし、総所得金額等が200万円未満の方は、総所得金額等の5パーセント

いずれの制度も年末調整もしくは確定申告で、その年の保険料や医療費を申告する必要があります。
特定支出控除|公務員が使える経費計上の特例
特定支出控除を活用して必要経費を計上しておくと、見かけ上の所得や税金が削減可能です。
特定支出控除とは、給与所得者が仕事の上で計上した経費が、給与所得控除額の50%を超えた部分について控除できる制度です。
控除できる主な経費は次のとおりです。
- 通勤費:交通費など通常の通勤経費
- 旅費:遠隔勤務や単身赴任、出張、駐在などにともなう移動における必要経費
- 転居費:転勤による転居の費用
- 研修費:職務上必要な技術や知識を培うための経費
- 資格取得費:仕事に必要な資格の取得費用
- そのほか:勤務に必要な図書、衣服、交際などに関する経費(65万円が上限)
なお、上記のうち「会社が負担しないもの」に抵触しないように注意が必要です。通勤費や資格取得費などは、会社が補填するケースも多いため、過剰に計上しないようにしておきましょう。
公務員の節税に関する知っておきたい基礎知識

公務員は、会社員と同様に源泉徴収を通じて税金が天引きされます。その際に、源泉徴収額は国税庁が毎年発表する源泉徴収税額表に基づき照合され、それぞれの給与所得者の給与・扶養家族を条件に額が決定されます。
しかしながら、上記以外の要素は正確に考慮されていません。年末調整や確定申告で正しく申告して、適正な税額に調整する必要があります。
そのため、給与から天引きされる科目や、経費計上の制度の理解は不可欠です。
ここからは、公務員が知っておくべき節税に関する基礎知識を紹介します。
公務員の給与から天引きされる税金の仕組み
公務員の給与からは、税金や社会保険料、そのほかのさまざまな控除科目が天引きされます。この点は、一般企業に勤める会社員と大きく変わりません。
| 天引きされる科目 | 概要 |
|---|---|
| 所得税 | 所得額に応じて国に納める税金で、その年の収入に比例して大きくなる。税率は所得に応じて段階的に引き上がる |
| 住民税 | 居住する自治体に納める税金。同じ自治体の居住者から一律で徴収する均等割と前年の収入に応じて課税される所得割の合計 |
| 社会保険料 | 一定の条件を満たす給与所得者が負担を義務付けられている保険料・年金。医療費負担を軽減するための「健康保険」、年金の原資となる「厚生年金」、介護サービスの負担を軽減するための「介護保険」の総称 |
| 共済貯蓄・財形貯蓄 | 公務員の財産形成制度で、給与から天引きして貯蓄を進める制度。貯まった金額を将来引き出せば、自分で使用できる |
| iDeCo | 個人型の確定拠出年金の一つであるiDeCoは、公務員なら給与からの天引きが可能 |
以上の天引きの影響で、月給の額面総額と手取り額には差が発生します。給与が高い方や多くの控除科目がある方の中には、額面と手取りの差に悩む方も多いでしょう。
所得控除・税額控除の2種類を理解する
日本の税制における控除科目は「所得控除」「税額控除」の2種類があります。
所得控除は、医療費控除や扶養控除、生命保険料控除、小規模企業共済等掛金の控除などが該当します。
所得控除は、その年の所得額を減額する項目です。所得税や住民税は、所得に税率をかけた金額が税金となるので、税金を減らす効果もあります。所得控除による節税額は、「控除される所得額 × 税率」で計算され、所得が高い人ほど、所得控除による節税効果は大きくなります。
税額控除は、直接税金額を減らす制度で、住宅ローン減税や寄附金控除などが該当します。控除として申告した金額が、そのまま節税額となる点が、所得控除との違いです。仮に控除額が同一の場合は、所得控除よりも税額控除の方が大きなインパクトがあります。
合法的な賢い節税と脱税の違い
今回紹介している合法的な節税と、脱税は全く性質が異なります。控除や税制優遇の制度を的確に理解して、混同しないように注意しましょう。
節税とは、所得控除・税額控除およびNISAのような税制優遇の制度を活用し、税負担を抑える手法を指します。いずれも国税庁や金融庁などの公的機関が定めた、正当な手続きです。
節税対策なしに源泉徴収を受けると、本来払う必要のない税金まで払ってしまう形となります。そのため、正しい年末調整・確定申告等により節税し、適正な税金を納めるのが望ましいといえます。
一方で、脱税は法律を遵守しない形で税負担を免れる、あるいは請求された税金を支払わない行為です。こうした行為は違法であり、発覚すると重加算税の追加課税、また悪質な場合は刑事罰に処されます。
節税と脱税は明確に異なる概念なので、両者の違いを理解しながら、賢く立ち回ってください。
公務員の節税対策の注意点|ルールを守って賢く節税

公務員の節税対策において注意すべきポイントを3点紹介します。
まず、公務員は原則として副業が禁止なので、副業に抵触しない形での税金対策を進めなければなりません。また、多くの節税には年末調整・確定申告が必要です。これを怠ると節税が実現しないので注意しましょう。
最後に不動産投資・NISA・iDeCoのような、投資を通じた節税にはリスクが伴います。節税を意識しすぎて、過度にリスクの高い資産運用とならないように注意しましょう。
投資や資産運用と副業の境界線
投資については、あくまで資産運用の範囲にとどめて、副業とみなされないように徹底してください。国家公務員法第103条、第104条および、地方公務員法38条にて、公務員は副業や兼職が禁じられています。
その点、有価証券や不動産への投資は、副業ではなく資産運用の一環とみなされるため、公務員でも実行可能です。
ただし、不動産投資については取り組む規模に注意する必要があります。あまりに規模が大きいと「不動産業」という「事業」を営んでいるとみなされるからです。
人事院規則14–8(営利企業の役員等との兼業)の解釈では、投資規模が「5棟」かつ「10室」未満、年間の合計賃料が500万円未満であれば、副業にはあたらないとしています。定められた規模に抑えて不動産投資に取り組むのが大切です。
多くの節税において年末調整・確定申告が必要
今回紹介した方法のうち、年末調整が不要なものはNISAくらいです。ほかの方法はすべて年末調整・確定申告において適用される経費や控除金額の手続きが必要です。
生命保険・社会保険控除など、いくつかの控除項目は年末調整で対応できます。医療費控除・寄附金控除・不動産投資の経費など、年末調整の範囲外の項目で節税する場合には、確定申告しなければなりません。
また、年末調整時に漏らしてしまった、もしくは期限に間に合わなかった項目も、確定申告を利用すれば控除を受けられます。
申告を忘れれば節税効果が出ないので、忘れずに対応しましょう。特に確定申告は作成書類・提出書類が多くなりがちです。早めに準備を始めて、不明点は税務署や税理士などの専門家に相談して、期限を守って正しく申告しましょう。
節税効果だけを強調する金融商品や不動産投資のリスク
節税効果を過剰に強調する金融商品や不動産投資は、本来存在するリスクに留意して検討しましょう。金融商品や不動産への投資は、資産運用の一環として行うものであり、節税だけを目的として取り組むものではありません。
投資には必ずリスクが存在し、経済環境や特定の市場の悪化等により、損失を引き起こす可能性があります。節税効果のみに着目して投資を検討すると、その投資先が持つ損失リスクを正確に理解せず、誤った投資判断を下す恐れがあります。
節税効果を強調した広告を見たり、営業トークを受けたりした場合には、安易に鵜呑みにしてはいけません。リスクとリターンを見極めたうえで、投資を判断しましょう。
公務員の節税に関するよくある質問【Q&A】

公務員の節税に関して、よくある質問と回答を紹介します。確定申告の要否に悩む方が多いため、必要となるケースを解説しています。また、投資で損失が出たときに実践できる損益通算と繰越控除についてまとめました。
いずれも節税効果を生む制度を最大限活用するうえで必要な情報なので、税金対策を進めるうえで、ぜひ参考にしてください。
Q1.年末調整以外に確定申告が必要なケースは?
次の方法で税金対策を実行する場合には、確定申告が必要です。
- 不動産投資をしている方
- 課税口座の有価証券投資で損失を出した方
- ふるさと納税・寄附をした方(※ワンストップ特例制度有)
- 医療費控除の対象となる方
- 年末調整で申告できなかった控除がある方
- 今年住宅ローンを組んで住宅ローン減税の対象となる方
この中で不動産投資で黒字となっている方は、確定申告をしなければ申告漏れとなってしまいます。
そのほかのケースは、申告しなくとも違法ではありませんが、本来は減らせる税金を余計に支払う形となります。適正な税額を支払うために、正確に確定申告を実施しましょう。
Q2.投資で損失が出たら利益と合わせて節税できる?
投資で損失が出た時には、損益通算もしくは繰越控除を通じて節税ができます。損益通算とは、特定の所得で損失が出たときに、ほかの黒字となっている所得と相殺して、総所得や税金を抑える方法です。
例えば、減価償却により不動産所得が赤字の場合には、給与所得などほかの所得と相殺ができます。また、有価証券の売買で生じた譲渡損失は利子所得・配当所得と相殺が可能です。
損失を同年のうちに損益通算しきれない時には、繰越控除という方法があります。これは、有価証券売買による損失を最大3年間繰り越して、別の年の利益と相殺ができる制度です。
これらの制度を活用し、損失を正しく申告することで、総所得に対して過剰な税金支払いを防げます。
この記事のまとめ
公務員は、給与からの源泉徴収を通じて自動的に納税されます。しかしながら、すべての要因を考慮して、税額が確定するわけではありません。各種の控除やiDeCo、不動産投資などを通じて生じた控除や経費を正しく計上すれば、節税が可能な場合があります。
多くの節税対策は、年末調整や確定申告が必要なので、年末および翌年初に忘れずに対応しましょう。また、副業禁止規定をはじめとした公務員特有の規制に抵触しないよう、注意が必要です。
今回紹介した6つの方法を実践して、税金負担を抑制しましょう。











税金負担に課題を感じる公務員の方は、この記事を参考に正しい節税方法を身につけておきましょう。